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「XP祭り 2006」感想 - XP(エクストリーム・プログラミング)を取り巻く環境とふりかえり習慣の一般化

2006年9月 4日

「XP祭り 2006」感想 - XP(エクストリーム・プログラミング)を取り巻く環境とふりかえり習慣の一般化

投稿者 進地

SEの進地です。

先日(2006/09/02)に行われた、日本XPユーザグループ(XPJUG)が主催する「XP祭り 2006」に今年も参加しましたので、私の“気づき”を何点か書きます(昨年のXP祭りに関するレポートはこちらです(ソフトウェア開発手法XPが顧客にもたらすメリット - 「XP祭り2005」感想)。

内容は、
 ・(エクストリーム・プログラミング)を取り巻く環境
 ・ニコカレ、プラクティスを作りだしていく姿勢
 ・ふりかえりの一般化
の3点です。


○XPを取り巻く環境

「XPの現在・過去・未来」と題して行われた永和システムマネジメントの平鍋さんによる講演は、XP/アジャイル開発に関連した書籍の歴史をマインドマップで洗いながら辿ってゆくサーベイ形式の講演で、XP/アジャイル開発が今現在どのような未来を指向し、周辺領域と関わりを持っているのかを把握できる内容でした。

平鍋さんによると、XP/アジャイルに関するテーマは今大きく5つの領域にわかれているとのことです。

 1.PM(Project Management)、産業界への拡大。適応。
 2.ファシリテーション
 3.テスティング
 4.要求開発
 5.テクニック・Tips

特に印象深く感じたのは「テスティング」と「要求開発」の領域でした。というのも、テスティングはOSS(オープンソース・ソフトウェア)のカスタマイズ案件を多くいただいている弊社にとって重要なテーマであり、要求開発はウォータフォールに代表される重厚なエンジニアリング手法において評価されていたが、XPにおいては──というものだからです。

XPは「コードの共同所有」を提言していますが、その提言の実現を担保しているのはテスティング、特に自動化テストによる徹底した繰り返し可能なテストです。リファクタリングもテストコードによって守られた環境があってこそ安心して行えます。弊社においては、OSSのカスタマイズ時に、個々のカスタマイズの品質への影響をいかに容易に知ることができるのか、元々にテストコードが用意されていないOSSのカスタマイズをいかに安心して行えるようにできるか、は大きなテーマです。

要求開発がXP/アジャイル開発においても注目されてきていることは、おそらくXPのPM、産業界への拡大と無関係ではないと思います。開発者視点中心になりがちだったXP/アジャイル開発は、その適応範囲の拡大につれ、より顧客に意識を向けてきているようです。顧客の要求を外さない工夫や取り込みが注目され、保守の観点からドキュメントの価値も評価されており、特にWhy(なぜその仕様/設計になったのか?)を表現したドキュメントの必要性が訴えられていました。「XP/アジャイル開発=コード中心のドキュメント軽視」という捉え方は、ますます実相と離れつつあるのではと思います。

PM、産業界への拡大、顧客中心へのシフトと従来の軽量さ、人、チーム、コードを重視するマインドの両立。これが今、XP/アジャイル開発が直面している大きなテーマのようですね。


○ニコカレ、プラクティスを作りだしていく姿勢

今年も幾つかのプラクティスが紹介されました。
中でも紹介が多く、私も注目したのは「ニコカレ」です。ニコカレはカレンダー上にその日の気分を表すシールを貼っていき、俯瞰してみることでチームの状態を「見える化」できるというものです。単にシールの色で気分を表すだけでなく、シールに顔を書いたり、決まったシールだけではなく個人が自由にシールを持ってきて貼り付けたり、一言コメントを付記するような工夫が提案され、これによってメンバー間のコミュニケーションを促進し、ふりかえりも行いやすくなるとのこと。確かに、単純にシールを貼り付けるだけではなく、一言コメントがあれば、とても簡単にその日の出来事を思い出せそうですね。また、メンバがおかしなシールを貼ったりすれば「ん?このシールどういう気分ってこと?」のような会話が自然と生まれる効果もあって、楽しそうです。

他にも、人気のストーリー/タスクを担当したいメンバーがバッティングした際にダーツの勝負で決めたり、レゴでバグの難易度、重要度、依存度を表現する「バグレゴ」など、メンバーが楽しくなるような、チームの雰囲気作りも意識したプラクティスも紹介されました。バグレゴは、バグを発見したら、そのバグが難しいバグであるほど難しいレゴを作って表現する面白いプラクティスで、紹介された方のチームではレゴ作りたさにバグの検出が楽しみになってしまうという現象が起きているそうです。
バグに対するマインドセット自体が変わってしまう、楽しいけれど凄いプラクティスだと思います。

自分達でやって楽しいプラクティスを作りだして、公開する。プラクティスを継続し、ふりかえりを通じて成長してゆくためにもこうした姿勢がとても重要なようです。


○ふりかえりの一般化

今年のXP祭りを通して強く感じたことは、「ふりかえり」の習慣がとても重要視され、また実践するチーム、組織が増えてきているということでした。よく知られている「KPT法」はもちろん、ニコカレやマインドマップをふりかえりに利用する手法も紹介されましたし、ここ最近、LifeHacks系ブログで度々紹介される、GTD(Getting Things Done)も一週間単位のふりかえり(GTDでは「レビュー」と呼んでいます)の重要性を主張しています。定期的なふりかえり、そして改善のループが一般化してきているということだと思います。ふりかえりの習慣が定着していない組織やチームはハンディを背負うような世界になってきているのかもしれません。

弊社も毎週月曜の早朝に全体ミーティングを行うなど、除々に定期的なふりかえりに力を入れてきていますが、KPT法のミーティングでの利用、ニコカレ、ゲームによる担当タスク決定などを採用して、より効果的に楽しくふりかえりを行えるような仕組みを考え出していきたいなと思います。

新しい、そして面白いプラクティスができたらここで紹介していきますね。

投稿者 進地 : 2006年9月 4日 16:06

カテゴリー: XP・アジャイル(システム開発)

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