2005年10月25日 Web制作業界はWeb2.0の波を乗りこなせるのか?

中野です。
SandBox Blogとしては初のトラックバックをしつつ、「Web制作業界とWeb2.0」を少し考えてみます。
きっかけは、インテリジェントネット株式会社のCOOである和田さんのエントリーです。

第5回WebSig会議「クリエイティブ・ブランディング・経験価値・Web標準・アクセシビリティなどを仕事軸で考える」(2)-Web2.0とか - インテリクリップ
http://blog.ini.co.jp/archives/000018.html

ちょっと説明すると、「WebSig会議」というのは和田さんがリーダーをやっているWebSig24/7というWeb制作者のコミュニティで、活動目的は同業者の情報交換や、業界のコモンセンス形成など。現在主な活動拠点はmixiで、コミュニティ人数は3000人を超えました。ぼくも初期からモデレーターとして参加しています。
先日のイベントには100人近くが集まりました(詳細はこのへんに)。


10/15のイベントの和田さんのまとめでは、Webサイトの役割・価値を市場の成熟に即して考えてみると

○第4段階:生活者主導の時代 ・キーワード:CGM(Consumer Generated Media)、Web2.0 (...) 企業側はシンプルな機能を提供(ユーザーがリミックス可能な形態での提供)し“ユーザーを協力者につけつつ”(ここいろんな意味を持ってます)発展していく形が新しい潮流として確実に出てきています。 (...) また、CGMはWeb2.0時代には、企業が認知経路の中で無視できない形になるはずです。

ということでした。

このフレームワークを眺め、Web業界の現況を思うと、ぼくは不安を感じます。

Webのコンサルティング、デザイン、システム開発などを行う「Web制作業界」にいるぼくらは、顧客企業やその先のエンドユーザーに向けて、マーケティング面でもコンテンツ制作においてもWeb2.0的な提案ができるという役割が期待されるはず。
それじゃ日本のWeb制作業界はWeb2.0の波を乗りこなすことができるか? ──と考えると、ポジティブな見通しよりネガティブな予測を裏付ける理由ばかりが浮かぶわけです。

思いつくままにちょっと挙げてみます(もちろんいくつかは自社にもあてはまるもの!)。


1) 日本のWeb屋のサイトは、多くが未だ「Web1.0」。RSSフィードも出してないしCMSも使いこなしていない。コンテンツは会社案内やポートフォリオの域を出ていない。提供内容が堅苦しく、"Openness"というマインドが見えない

2) インフラとしてのBlogosphereがこれだけ整ってきているのに、Blogを持っていない会社が多い。あったとしても開店休業状態(「Blogソリューション」を謳う企業さえ!)。つまり、「オンラインコミュニケーション」の経験値を溜めていない

3) 企業内個人が立っていない。パーソナリティが見えない

4) OSS(オープンソース・ソフトウェア)をサービスラインナップに加える企業は増えてきたが、その多くは使うだけ。開発コミュニティに参画し、なんらかのフィードバックや貢献をする企業はすごく少ない


つまり、AjaxだのREST APIといったスキル以前に、マインドセット企業文化がまずいんじゃないかと思う。

このままでは、Web2.0──前のエントリーでも言ったように、Web2.0がFadだろうがBubbleだろうがどうでもよく、それがもたらす企業やエンドユーザーの大変化──の流れに確実に遅れはじめ、「おとなしい受託制作業界」に成り果ててしまうんじゃないかという危機感が拭えない。


まずはともかく、経営者・マネジメント層がもっと「今、Webで何が起きているか」に関心を払iい、動いていかなきゃダメだと思う。

かなりネガティブなことも書きましたが、座視しているつもりはありません。次のWebSigイベントのテーマは「Web2.0」なので、上でしたような問題提起も含めてあれこれ動いてみようかな、と。


// このエントリーは「同業者批判」的内容を含んでいるので、何度も推敲し、
// それでも公開に躊躇はあります。でもこれから先、Web屋はこんな話も
// オープンにできてナンボ、という思いが強いので、出しちゃいます。

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2005年10月24日 WebのOpennessとYet Anotherなサービスの氾濫

Breaking the Web Wide Open! (complete story) :: AO
http://www.alwayson-network.com/comments.php?id=12412_0_1_0_C

Marc Canterによる長いコラム。彼は、元MacroMind(現 Macromedia)で、今のWebの主要技術のひとつであるFlashの元となったDirectorをつくった人だ。
このコラムでは、Web2.0とも結びつく重要な概念である"Openness"がWebにどう行き渡っているかについて、最新の状況をまとめたもの。

取り上げられているのは、Identity 2.0とかAttention.XMLの話とか、FOAFとかXFNとかXMPPとか。


で、英語圏では日々多くのWeb2.0っぽいサービスがリリースされ、割とホットなオンラインカレンダーやタスクマネジメント系サービスではこんな感想もある、という例。

A View from Home:MyPIMP and other useless things
http://www.momathome.com/viewfromhome/2005/10/mypimp_and_other_useless_thing.php

::sigh:: It's a YAWAT-TAISY: Yet Another Web Application Thingy-That Assumes I Started Yesterday.

"MyPIMP(My Personal Information Management Porta)l"というのは9月初めにリリースされたばかりのオンラインPIMで、このサービスを使ってみた女性ブロガーの表現、"Yet Another Web Application Thingy-That Assumes I Started Yesterday (昨日使いはじめたのと同じようなWebサービスが、またもうひとつ)"が面白いと思う。

日本は、まだまだこんな状況じゃない。
自らもプレーヤーとしてこういう創造のカオス、玉石混交のサービスラッシュに身を投じてみたいもんだと思うわけです。

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2005年10月20日 GYM(Google, Yahoo, Microsoft)はWeb2.0時代をこうして生き抜く

コンサルタントであるJeff ClavierがやっているSoftware Onlyというブログは結構前からチェックしていますが、彼の"My first ZDNet column: Innovation 2.0" というエントリー経由でZDNetのコラムを読みました。

Innovation 2.0: Why Web 2.0 companies might have to flip to avoid being flopped | Between the Lines | ZDNet.com
http://blogs.zdnet.com/BTL/?p=2029

要旨はこんな感じ。

GYM(Google, Yahoo, Microsoft)などのエスタブリッシュなプレーヤーは、Web2.0にどう適応しているか? 彼らが最初の頃リリースしたサービスは的外れだったが、だんだんピントが合ってきた。そして何より重要なのは、彼らは(ベンチャー企業に比べ)成功に欠かせないスケーラビリティを容易に解決できてしまう巨象だということだ。

以下は、大意を掴むためにコラム本編を抜粋・訳したもので、体裁は整ってないことをお断りしておきます。


The industry commentaries have already stated that "build to flip" was a very risky endeavor, especially as the number of "feature startups" increases exponentially in a number of clusters (bookmarking, media sharing, mashups of all sorts). However, there are cases where a short term exit might not be such a bad thing. Here is why.

ビジネスの評論家たちは、大企業がWeb2.0的なサービスを持つスタートアップ企業を買収するのはリスクが高いと指摘するが…と続く。
ちなみに"build to flip"とは、Business 2.0にOm Malikという人が書いた記事から来ている表現らしい。

Techdirt:Can You Successfully Build To Flip?
http://www.techdirt.com/articles/20041001/065216.shtml

MySpace、Skype、Facebookは既に"escape velocity"(重力脱出速度)状態にあり、つまり追随不可能な成功レベルにまで達していて、

Interestingly, technology had nothing to do with the differentiation at all,

興味深いことに、テクノロジーは差別化にはまったく関係がない

しかしコミュニティに対するサービスであれば、誰かが既に築いたユーザー基盤や巨大なネットワークが必要だ。ネットワークとは誰か? GYM(Google, Yahoo, Microsoft)だ。彼らはこの1年黙って座っていたわけではなく、MSN Spaces、Yahoo 360、Google Maps、MSN Visual Earthなどの新しいサービスをリリースしてきた。

これまで技術とビジネスの世界では、「イノベーションのジレンマ(innovator's dilemma)」が通用してきた。が、Web2.0の世界では違う

Innovation 2.0 is a context in which large companies take on ideas and develop new products and services using the same tools as fledgling start-ups (LAMP, Ajax and stuff…), and release them within six to twelve months of the first mover.

大企業がひよっこ企業同様に、LAMPやAjaxといった環境・技術でモノやサービスを創り上げ、6~12ヵ月の間にリリースする、それがInnovation 2.0だ。

Googleの社員は3000人。彼らは業務時間の20%は私的なテーマの研究に費やしていいのだから、それは600人の精鋭軍団がイノベーションに投入されているのと同じなのだ。Yahoo!も""Friday Fun"という制度でエンジニアに同じことをさせている。
また両社とも"Founders awards"を設け、ベストなチームに凄い額のボーナスを贈ることで、社内起業のメンタリティを育てている。

GoogleはDodgeBallを、Yahoo!はUpcoming.orgを、種まき期(seed stage)のスタートアップ企業として安く買収した。買収された彼らは、豊富な開発資源を手に入れた。
アーリーステージ(early stage)、つまり1~2年の運営のあとで行われた買収では、創業者はプロジェクトメンバーにDNAを植えつけるために1~2年留まる。

などなど。

「お砂場企業」という個人的なテーマに照らすと面白く、大企業のWeb2.0への適応は「R&D」と「買収戦略」が鍵だ、と読み取りました。

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2005年10月17日 SandBox Blog - Web2.0時代、お砂場企業(SandBox Company)をめざしてみたい

中野です。
キリよく10月1日にスタートするつもりだったんですが、今日ようやくはじめます。

アークウェブでは、既存のお客様・潜在的なお客様向けの「アークウェブ ビジネスブログ」を既に運営していますが、ark-web.jpサイト内で2本めのこの「ARK-Web SandBox Blog」の役割は、まだ明瞭には決まっていません。

ただ、今日(05年10月17日)現在このブログのタグラインには「Web2.0時代、Web制作会社が日々考え、創り、壊したりする「お砂場」的試みと連携するブログ──姿勢はオープンに、つたなくても繕わず、楽しみながら。」(このタグラインはころころ変える予定です)と書いたように、今Webに起きている大変化を積極的に受け入れ、さまざまな考えを巡らし、試行錯誤する姿をオープンにお伝えする場にしていきたいと思います。

北米を中心に盛り上がる新しいパラダイム"Web2.0"は、Buzz Word(流行り言葉)ともHype(過剰宣伝)ともFad(一時的流行)ともいわれます。が、仮にWeb2.0というキーワードが半年後には廃れてしまったとしても、それが言い表そうとしているインターネットやWebの姿が後戻りすることはない、ということがより重要なはずです。

ここ最近ずっと、ぼく自身は「Web2.0時代に企業はどうあるべきか」を考えているんですが、その際に出会ったのがpeterme.comの以下のエントリーでした。

peterme.com: Designing for the Sandbox
http://www.peterme.com/archives/000522.html

エッセンスは、以下の一文です。

" Del.icio.us, Backpack, Upcoming, and others are designing for the sandbox. "

(del.ici.us、Backpack、UpcomingはWeb2.0的だといわれるWebサービス企業です。わからない方は、ご自分でググってみてください。)

GoogleとYahoo!を対比したこんなセンテンスもあります。

" Google designs for the sandbox. Yahoo tries to control the playground (am I overextending the metaphor?). "

最近の(My Web 2.0などの)Yahoo!の動きを見るとちょっと言いすぎかも、とも思いますが、企業文化としてはそうなんだろうと納得できます。

このエントリーで言われている"SandBox Company"(お砂場企業)になる、あるいは少しずつ「お砂場」的よさを取り入れていくのが進むべき道じゃないか、というのが今の暫定結論です。

というわけでお砂場のためのブログ、はじめます。

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