先日NPO「ハーモニー・アイ」の総会の後の懇親会で、Sさん(全盲・中途失明)と電子書籍の話になり、ぼくがそのとき持っていたKindle Paperwhiteをさわってもらいながら機能を説明しました。
話しながら気づいたのですが、Paperwhiteにはそもそも音声読み上げの機能がありません。でも、KindleにはiOS版・Android版のアプリもあるので、それらを使えばOSのアクセシビリティー機能を利用して読み上げることができるんだろうか? 現状、電子書籍デバイス、アプリなどの視覚障害者向け対応はどうなっているんだろう? と疑問を抱いたので、簡単に調べてみました。
2013年6月現在、日本で正規に入手可能な端末はKindle Fire(Fire HD 8.9、Fire HD、Fire)とKindle Paperwhite(Paperwhite 3G、Paperwhite)。前者にはステレオスピーカーがあるが、後者にはオーディオ機能がない。
Kindle Fireの音声読み上げ機能について、Amazonのヘルプには「本の読み上げ機能があります。なお、この機能は読み上げ機能に対応しているKindle本のみで使用できます。日本語の書籍は現在、読み上げ機能に対応していません」とある。つまり、現在日本で売られているKindle端末では日本語書籍を音声読み上げで利用することはできないわけだ。
iOS版のKindleアプリでは、2013年5月1日にリリースされたバージョン3.7からVoiceOver機能での音声読み上げがサポートされた。つまり、iPhoneやiPadを使えば音声による読書を楽しむことができる。
この記事は、実際に機能を試した上で書かれており、若干問題はあるものの「Kindle書籍へのアクセシビリティーは大いに改善された」と評価している。
Androidでも、OSレベル(「ユーザー補助」機能)で音声読み上げ機能はあり、日本語にも対応している。例として、2013年5月現在Google純正の検索アプリでは、音声入力で検索すると検索結果を読み上げで返してくれる、というサービスもある。
が、Kindleアプリの音声読み上げ機能についての言及は見当たらない。Amazon提供のKindleアプリがまだ対応していないため、できないようだ。
Googleの電子書籍ストア/ビューワーであるGoogle Play Booksは、日本語での音声読み上げに対応している。ただし標準のTTS(Text To Speech:音声読み上げ)エンジンでは日本語がサポートされていないため、N2 TTS(無料)などをインストールし設定する必要がある。
実際に青空文庫版の「蜘蛛の糸」をダウンロードして読み上げさせてみたところ、ルビの読み上げなどは一部おかしなところがあるが、良好だ。
2013年6月現在、入手可能なデバイスはKobo glo、Kobo Touch、Kobo miniの3種類がある。製品ページを見てもスピーカーが付いているのかいないのかよくわからない。ないようだ(楽天の製品ページはともかく宣伝調で、必要な情報が探しづらい)。 KoboにはAndroid用アプリがあるが、音声読み上げ機能についての言及はなし。iPhoneアプリも音声読み上げについての記述は見当たらず。
がんばってほしいですね...。
Lideoの端末には音声読み上げ機能はない。 BookLiveにはWindows用、Android用、iPhone/iPad/iPod touch用のアプリケーションBookLive!Readerもあるのだが、説明ページに音声読み上げについての記述はなし。
2012年12月時点の情報。英語圏で利用できる端末やサービスについても詳しい。
このブログ記事は、iOS版のKindleアプリが日本語読み上げに対応するまでは、Kindle書籍について「すぐ目の前にご馳走が並んでいるのに、手を加えてじっと見つめているしかなかった」といい、また書籍一般が「デジタルデータになったといっても著作権保護のためにスクリーンリーダーでは読み上げできない形で提供されていることが多い」といった懸念も表明しています。
前述のSさんは、電子書籍の普及に期待をこめ、連続ものの娯楽小説などをタイムリーに読めるようになるのをとても楽しみにしている、と仰っていました。
自然な音声による音声読み上げは、全盲の人はもちろん、弱視の人、一時的に読む(見る)ことができない環境にいる人にとっても役立つもの。より多くのサービスが対応してくれることを期待したいです。