SEの竹村です。
2009年1月29日?1月30日に開催されたAdobe MAX Japan 2009に行ってきました。
Adobe MAX Japan 2009
http://jp.max.adobe.com/
このサイトは全面Flashを利用しています。
私は、当日会場を誤ってしまい台場駅を挟んで逆側が会場だと思い込んでおり、違っていたのを知ってから慌てて携帯で検索をしたんですが、このサイトがFlashの代替手段を提供していない関係で探し当てるのにずいぶん苦労しました...。
おそらくCMSを利用してFlashで表示するコンテンツの管理をしているのだと思いますが、同じ情報を非Flash向けのコンテンツにも配信する配慮が足らなかったように思います。
さて、気を取り直してAdobe MAXの話をしていきます。
私は次のようなセッションを聞いてきました。
これらすべてを1つずつ見ていくと大変なので、基調講演について書いていきます。
Adobe MAXの基調講演の内容は様々なニュースサイトに書かれているので、私なりの考察を交えつつ進めていきます。
基調講演は、前回同様にAdobeの今と今後のトレンドについて、Adobe CTO のケビン・リンチ氏が話してくれるのでとても参考になります。
下記のAdobeの「3つのトレンド」をベースに話が進んでいきます。
これは大事なところなので、1つずつ見ていきます。
Clientが示すのは、Webサイトの閲覧時に動作するサーバとクライアントのうちの『クライアント』を指しています。クライアントが実行するのは、Flashならブラウザだったり、AIRならデスクトップアプリだったり、ユーザのローカルで動作するアプリを指しています。
このクライアントで動作するアプリは、AdobeではFlash10による動作の紹介として、3Dの描画や、DrawingAPIを利用した画像へのエフェクトについての例を挙げていました。
3D的な表現はいずれブームになるように思いますが、今アツイのはAdobe AIRの方ですね。「ニューヨークタイムズ」の例や、神奈川の「住建業界の物件管理システム」の例や、FeliCaの非接触ICをメンコに埋め込んでバーチャルな世界でメンコ対決をするアプリの紹介がありました。
Adobe AIRの事例はどんどん増えているようで、Sneak Peekでも普通にAIR前提のアプリを作っていたりします。AIR開発はHTML, JavaScript, Flashなどの既存の技術の延長線として開発できる取っ掛かりの良さというメリットがありますし、AIR 1.5になってからローカルで動作するデータベースのSQLiteが暗号化されることで、エンタープライズ向けのニーズももっと増えてくるのではないかと個人的には思うところです。
なぜなら、サーバからAPIで取得したデータをSQLiteにいったん保存してから、そのデータをローカルで検索した方が、
という 2つの利点があるためです。
データ提供側としてはSQLiteに格納させる情報提供データを生データとして置きたくないところがあったと思います。これが暗号化により該当のAIRアプリのみが利用するデータとなれば、SQLiteへデータを入れる障壁がなくなるものと思います。
なお、SQLiteを利用して検索する方法については「B-3 AIR最適化テクニック」で聞いてきたAIRならではのテクニックでもあります。
クラウドについては、Tour de Flex(英語) という外部APIをFlex用のコンポーネントとして提供し、Flexからはコンポーネントを利用してそのAPIが使えるようにできるようです。
これは、次のSocial Computingにつながってきています。
Social Computingでは、現在開発中の「Adobe Wave (英語)」の紹介がありました。
このAIRアプリをインストールしておくと、MySpaceの更新通知などをAdobe Wave上で通知してくれる。という、いわゆるソーシャルアグリゲータですね。
Adobe AIRによるソーシャルデスクトップアグリゲータは、すでにいろいろな人が作っているのですが、Adobe側が改めて開発したのは「Tour de Flex」との絡みや、「Adobe Cocomo」などの新しい技術的な意図を持っていそうです。
さて、外部APIの利用が簡単にできるようになれば、当然より多くのAPIをマッシュアップしたアプリが作れるようになります。より多くのAPIを利用することができれば、API同士を跨いだ活用もできるようになります。
1つのサービスの利用状況を見ていても、利用者の1側面しか分かりませんが、多くのサービスで情報を発信すれば、この人がどういう人なのか、というのが分かるようになってきます。そうすると、別の誰かとのつながりが導きやすくなったり、広告やリコメンドなどについてもより正確な情報を提供できたり、多くのメリットがあります。
というわけで、Flex上のこのインフラ整備を今Adobeがやっている、ということですね。
Devicesについては、Adobe Open Screen Projectがベースになる話が大半でした。
Open Screen Projectでは、TVやその他家電に対するFlashの解放もメインですが、主に携帯電話が対象のようです。Open Screen のデザインは、ケータイへの実装がまず初めにありPCや家電はそれをベースとして実装されるだろう、ということを言ってました。
それを受けてか、docomoの中期ビジョンの 1つに携帯端末へAdobe AIRを入れるということを言っています。「AIRとケータイでできること」については、ハートフルなムービーがあったのでWebで公開されたらぜひご覧になってください。
さて、Adobe AIRでできることの1つにオンラインとオフラインの境目をなくすという命題がありますが、これについては、AIRでなくてもdocomoの携帯には現在Flash Lite3.0, 3.1がプリインストールされています。またau、softbankにはFlash Lite2.0がインストールされています。
これらを利用して、オフラインで作業して、オンラインになったら内容を送信するFlash Liteアプリは現在の携帯端末でも作ることが可能です。そのソリューションの1つとして、私が個人的に制作した『モバHARU』という携帯のFlashアプリがあります。これについては、また別途ブログとして書きます。
『モバHARU』がどういうものかを簡単に説明すると、アセントネットワークスさんの運営されているHaruというTwitterのような「つぶやき」に写真やビデオを添付できるサービスがあるのですが、こちらで発言した内容をFlash LiteでAPI経由で取得して携帯端末に表示することができるサービス。
また、携帯端末からコメントを書いて送ることができますが、このコメントを付けている間はオフラインで作業できます。API経由で取得できるスレッドは15件あるので、複数のスレッドにコメントを書いてローカル上にストックしオンラインになったら全てのコメントをサーバに送信する。ということをしています。
地下鉄利用者としては、重宝します^^
今年のMAXの基調講演をまとめると、
という感じでしょうか。
アークウェブとしても、リッチなユーザインターフェイスをFlexで実装することが、少しずつ増えてきました。現在はウェブをリッチにして、検索しやすくしたり入力しやすくしたりして、サービスのユーザインターフェイスの向上を図っていますが、そのサービスが提供する情報をもとにしたコンテンツしか検索できなかったり、そのサービスを受けられるのはウェブサイト利用者だけだったり、課題は残っているように感じます。
もっとソーシャルにすることが簡単になり、ウェブ以外との連携がスムーズにできるようになる。という理想を実現するために、Adobeやdocomoのプラットホーム整備がどんどん進んでいるので、今後とも注目していこうと思います。