デザイナーの小森です。
先日発表された、日経BPコンサルティングによる「全国自治体サイト・ユーザビリティ調査2005/2006」の結果を元に、ちょっと記事を書いてみます。
最もユーザビリティが高いのは名古屋市のサイト 「自治体サイト・ユーザビリティ調査」より
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/govtech/20051031/223778/
WebアクセシビリティJIS規格(JIS X 8341-3)が制定されてから1年あまりが経ちました。記事中に「優れたサイトであっても現状維持だけでは相対的に評価が下がってしまう傾向にあった」とのコメントがあるとおり、各自治体のWebサイトのユーザビリティやアクセシビリティの取り組みが年々進んでいることが伺えます。
評価基準については記事を参照していただくとして、「ユーザビリティ」「アクセシビリティ」について制作者の視点で上位3サイトの検証をしてみることにします。
1位:名古屋市 http://www.city.nagoya.jp/
大都市であるがゆえに、市民・企業・観光客など多様な目的を持つ訪問者がいるはずです。それに対応できるように、色分けされたタブによるわかりやすい情報区分、迷わない情報設計がなされています。
また下記のような点でアクセシビリティについても配慮されており、見習いたいところです。
・画像文字を含め、全体に大きな文字で表示されていること
・文書構造に則って、特に見出しがきちんと見出しとしてマークアップされていること
→見出しは画像のalt付けの次に大事な点です。音声ブラウザの場合、見出しが適切にマークアップされていると見出しごとに記事を飛ばすことができるので、長いページを最初から最後まで延々と聞き続けずに済むようになります。
・音声ブラウザに配慮したメニュー飛ばしのリンクを配置していること
・JavaScriptによる「文字を大きくする」ボタンを配置していること(JavaScriptオフ環境に対する配慮も欲しいところ)
また、意外に他の自治体がフォローしていないようですが、印刷用のCSSを設けていたり、情報別にRSSを配信しているなどの点も見落とせません。
2位:さいたま市 http://www.city.saitama.jp/
膨大なコンテンツを階層化してうまくまとめています。各ページでは共通したグローバルナビゲーションとパンくずリストが配置され、迷うことがありません。問い合わせフォームも各コンテンツの下部にあり、不明点がある場合はすぐに問い合わせできるようになっています。
難点をあげるなら、目的が決まっているユーザにとってはヘッダロゴ下の一番目立つ位置に検索窓が配置されているなどとても便利ですが、検索機能を使い慣れない初心者にとっては敷居が高く、またカテゴリによってはたくさんのページがリストされわかりにくいという点でしょう。トップに設けられたショートカットの可読性をもっと高め、わかりやすくナビゲートできるとなおよさそうです。
また、音声ブラウザについては未対応のようです。
3位:取手市 http://www.city.toride.ibaraki.jp/
特徴的なのは、「サイトの使い方」「文字を大きく」といったシニア層やライトユーザを意識したメニューが左カラムの一番上にあり、訪問者の目に付くようになっている点。
この「文字を大きく」は、ブラウザで文字を大きくする操作方法の説明ページにリンクしています。このようなページ自体は最近では一般的ですが、ここで配慮がなされていると感じるのは、このページに来た時点ですでに本文が大きな文字で表示されていること。そもそもこのページを閲覧するユーザは読みにくいから来るわけで、確かにあらかじめ大きい文字でないと苦労するうはずです。これはちょっとした盲点だと思いました。
こちらのサイトも名古屋市と同様、文書構造に則り、かつ音声ブラウザを意識したマークアップを行っています。
自治体サイトのレベルは年々上がっているということで、レビューした3サイトはいずれもかなりの品質だという印象を持ちました。